Laboratory for Sensory Circuit Formation
Business picture

研究内容(研究者向け)

 膨大な数の神経細胞からなる哺乳類の神経系の発生する際、神経細胞はどのようにして多様化し、 また多様な神経細胞はどのようにして整然と配線するのでしょうか? また、脳機能を担う神経回路ネットワークはいつどのように構築されるのでしょうか?これらの問題を解く上で、 近年マウスの嗅覚系は優れたモデル系として着目されてきています。マウスの嗅覚系では、 匂い分子は約1000種類の嗅覚受容体によって検出されています。個々の嗅神経細胞においては1種類の嗅覚受容体のみが発現しており、 嗅神経細胞の軸索投射先は発現する嗅覚受容体によって決められています。 また、嗅神経細胞の接続先である嗅球の僧帽・房飾細胞は特定の嗅覚受容体からの入力のみを受け入れています。 このようなことから、嗅覚系は神経細胞の多様な「個性」に着目した神経回路研究を行う上で、大きな可能性を秘めています。
 当研究室で嗅覚一次中枢である脳の嗅球にフォーカスし、 嗅神経細胞からの入力依存的に特異的な神経回路が形成される仕組み、機能ネットワークが構築される仕組みを明らかにしたいと考えています。 分子生物学・マウス遺伝学に加え、新規遺伝学ツールの開発、 一細胞トランスクリプトーム解析、in vivo二光子イメージング、カルシウムイメージングなどを駆使して 哺乳類神経回路形成の新規ロジックの解明を目指します。現在、以下のテーマを進めています。

1) 嗅球における匂いマップの発生・再生機構
 嗅神経細胞は生涯に亘ってターンオーバーし、軸索を再生しています。胎児期に出来上がった嗅覚地図に再生軸索が厳密に接続 することは、匂い情報を生涯に亘って維持する上で極めて重要です。実際、ウイルス感染や物理的ダメージ等で嗅神経細胞が死んだ後 再生軸索が正しく嗅球に接続しないと、異臭症の原因となります。 我々は再生軸索が神経地図に正しく配線する仕組みを研究しています。
参考文献: Imai & Sakano, Curr Opin Neurobiol (2008); Imai & Sakano, Eur J Neurosci (2011)

2) 嗅球において匂い情報処理を支える神経回路の解明
 嗅球では、嗅神経細胞によって受容された匂い情報が糸球体に収斂し、2次神経細胞の僧帽・房飾細胞へと受け渡されますが、 ただ単に情報を受け渡しているという訳ではありません。嗅球には驚く程精緻な神経回路が存在し、匂い情報の質的変換が行われています。 我々は2光子カルシウムイメージングを用いて匂い情報処理の様子を明らかにすると共に、遺伝学やコネクトミクスによってその 分子機構・回路基盤の解明を目指しています。

3) 嗅球・嗅皮質における入力特異的回路形成の機構
 嗅球において、僧帽・房飾細胞は単一の糸球から単一の主樹状突起を介して興奮性入力を受け取るとともに、 周囲の複数の糸球カラムから側方樹状突起を介して主に抑制性の入力を受け取ります。僧帽・房飾細胞はまた、嗅球内、嗅皮質の 特定の領域に軸索投射を行います。こうした神経接続の特異性が生後発達過程で確立されるプロセスの解明を目指しています。具体的には以下のような問題に取り組んでいます。
- 嗅神経細胞の入力によって嗅球の回路が誘導される仕組み。
- 僧帽・房飾細胞が単一の糸球体に接続する仕組み。
- 僧帽・房飾細胞の側方樹状突起や軸索を介した嗅球内回路の特異性を決めるメカニズム。特に神経活動のタイミングを決める仕組み。
- 生後発達過程における自発神経活動の役割。特にin vivo 2光子イメージングをもちいた自発神経活動や樹状突起発達の解析。
- 生後発達過程において機能的な回路構造が作られる仕組み。特に機能的な神経回路ユニット「微小回路」が作られる原理。
 2), 3)に関する参考文献:Imai, Seminars in Cell & Developmental Biology (2014) [PDF]

4) 新奇遺伝学ツールを用いた局所神経回路の可視化と操作
 複雑に絡み合った神経細胞の中から、目的とする神経細胞だけを遺伝学的に操作したり可視化することは容易ではありません。 我々はこれを可能とするための遺伝学ツールの開発を行っています。 また、大規模な神経回路構造を解明のための脳組織透明化法SeeDBの開発など、革新的な神経回路可視化技術の開発も進めています。

 当研究室に興味のある方はこちらの総説をご覧下さい。業績についてはこちらをご覧下さい。詳細な研究内容や参考文献について知りたい方は、今井までご一報ください。


日本語の総説

組織透明化試薬SeeDBを用いた脳の3D蛍光イメージング
柯 孟岑 、今井 猛
実験医学 2014 Feb;32(3):449-455. [PDF] [実験医学]

軸索間相互作用に基づく神経地図形成のロジック
今井 猛, 山ア 崇裕, 坂野 仁
細胞工学 2010 Jan;29(1):78-85. [PDF]

嗅覚受容体に依存した軸索投射の分子機構
今井 猛, 坂野 仁
生化学 2007 Dec;79(12):1148-52. [PDF]

嗅球脳科学辞典
今井 猛


研究室紹介動画(YouTube)

過去のプレスリリース(一般向け)

  • 哺乳類嗅覚系で嗅覚受容体が軸索投射を制御する機構の解明
    [東大 2006/10/12]
  • 高等動物の認知機能の基盤である「神経地図」が作られるメカニズムの解明
    [東大 2009/7/10]
  • 簡便で生体試料にやさしい組織透明化試薬「SeeDB」を開発
    [理研 2013/6/24] [CDBニュース] [サイエンスチャンネル(YouTube)]
    [YouTube(1)] [YouTube(2)] [YouTube(3)]